スーツには冠婚葬祭をはじめ、着用シーンによってさまざまなルールやマナーが存在します。こういったシーンにスーツで臨むことが少ない人にとって、どのような行為がNGで、どうすればスマートに着こなせるのか迷う方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、スーツに関するマナーをシーンごとに解説します。スーツをスマートに着こなしたい、失礼のないようにしたい、と考えている方はぜひ参考にしてください。
スーツを着る際にはスマートに見える着こなし方や特有のマナーが存在します。これらのマナーを知り実践することで、よりスマートでプロフェッショナルな印象を与えられます。ビジネスシーンでは相手に失礼のないように、また、自分自身のブランディングのためにも正しいスーツの着こなしを心がけることが大切です。ここでは、スーツの着用に関する基本的なマナーを紹介します。
スーツはビジネスやフォーマルな場面での必需品です。着用するシーンによって適切なスーツを選び、正しいマナーで振る舞うことが相手に好印象を与えるカギとなります。
ビジネスのマナーにおいて、スーツの選び方や着こなしは非常に重要です。特に初対面の相手や取引先との接触時には、第一印象を左右する要因となります。
スーツは、体型に合ったサイズのものを着用することがポイントです。たとえば、上着はウエストまわりが適度にシェイプされ、着丈はお尻が隠れるくらいの長さが理想的です。また、袖の長さもワイシャツの袖がほんの少し見える程度が好ましいとされています。
スラックスの長さは、靴下が丸見えになるほど短いと着崩したように見えたり子どもっぽく見えたりする一方、地面に触れるほどの長さは野暮ったく見えるため、靴に裾が少し触れる程度がよいでしょう。
ブラックの無地のスーツは礼服としての位置付けがあるため、ビジネス向きではないとされておりました。特に海外ではNGです。ただ、近年では礼服ほど黒さの濃度が深いものでなければ着用に問題がなくなってきました。しかし、一昔前の印象を持たれる方も多く、ビジネスシーンで安心して着用するのであれば、小柄や織り柄が入っているものですと安心です。スーツは暗めを好まれる方、職業によって暗めのスーツが必要な場合は、濃紺またはチャコールグレーのスーツを選択するのもおすすめです。
リクルートスーツは、新卒の就職活動時に着用することが多いスーツです。ビジネスシーンでの着用については場面や業界によって異なることに留意が必要です。
スーツの柄に関してはビジネスシーンでは控えめなものが好まれます。たとえば、ストライプやチェック柄は細かすぎず、目立ちすぎないものを選ぶとよいでしょう。
結婚式に参列する際の服装は新郎新婦の大切な日を尊重し、他のゲストとともに華やかな雰囲気を演出できる服装を選ぶ必要があります。そして、結婚式のメインは新郎新婦であるため、新郎新婦よりも目立ちすぎない服装を選ぶことが大切です。グレーやブラウンのスーツを着用しての参列は色柄が華美になりすぎないよう、特に注意が必要です。
白は新婦が着用するウェディングドレスの色であり、新郎が白のタキシードを着ることもあるため、ゲストが白いスーツを着ると主役が引き立ちません。そのため、白または白に近い色のスーツは避けたほうが良いでしょう。
黒のスーツはフォーマルであり、結婚式では多くの人が着用します。しかし、黒のスーツに黒のベストやネクタイを合わせると、お葬式のような暗い印象になってしまいます。そのため、黒のスーツを選ぶ場合は、他のアイテムの色を工夫して、全体が暗くならないように配慮すると良いでしょう。
普段のビジネススーツをそのまま結婚式で着用するのは避けたほうが良いでしょう。特に、普段のネクタイや大きなビジネスバッグ、くたびれたシューズを組み合わせると仕事帰りのような印象を与えてしまうため注意が必要です。
アニマル柄は、動物の殺生を連想させるため結婚式での使用は避けましょう。また、キャラクターもののデザインはカジュアルすぎる印象を与えるため注意が必要です。
結婚式は新郎新婦が主役であるため、彼らよりも目立つような派手な服装は避けましょう。とはいえ、主役を引き立てる範囲であれば、華やかなカラーを取り入れても構いません。
葬儀や通夜に参列する際にも独特のマナーが存在します。故人への敬意を示すため、また、他の参列者との調和を図るために、適切な服装を選ぶ必要があります。
まず、葬儀にビジネススーツを着用して参列することは避けましょう。葬儀は故人を偲ぶ場であり、ビジネスの場とは異なります。その場の雰囲気や格式に合った服装で参列しましょう。一般的に、葬儀に参列する際は喪服と呼ばれる真っ黒なスーツを着用します。
一方、通夜に参列する場合にはビジネススーツを着用しても問題ありません。ただし、明るい色や派手な柄のスーツは避け、控えめな色合いのものを選ぶよう心掛けましょう。また、葬儀や通夜に参列する際の小物にも注意が必要です。ネクタイやハンカチ、靴下なども黒を基調としたものを選び、靴は黒の革靴を着用しましょう。
転職活動や新卒の就職活動は自分自身を売り込むための大切な機会です。そのため、面接の際のマナーや服装、言葉遣いなど、細部にわたり注意を払う必要があります。ここでは、就職・転職活動の際の基本的なマナーについて解説します。
面接の際の服装や髪型は第一印象を左右する重要な要素です。黒や濃紺のシングルスーツを着用することが一般的です。髪型や髪の色も清潔感を意識し、ビジネスマナーを疑われない範囲で選びましょう。
カバンやシューズについても面接官の目に留まりやすいポイントです。カバンは自立できるものを選び、シューズは清潔感があって適切な色やデザインのものを選びましょう。
スーツを着用する際には、その美しさや格式を保つためのマナーが存在します。これらのマナーを意識することで、自分自身の品格や信頼性を高められます。ここでは、スーツを着用する際の基本的なマナーについて解説します。
一般的に三つボタンのジャケットの場合は上から二つ目のボタンのみを留めるのが基本です。一番上のボタンや一番下のボタンを留めると、スーツのシルエットが崩れてしまうためです。二つボタンのジャケットの場合は、上のボタンのみを留めるようにします。
ジャケットのボタンを留めたまま座ると、ジャケットが引っ張られてシワができやすくなります。そのため、着席する際にはボタンを外すのがマナーとされています。ただし、就職活動中などの特別なシチュエーションでは、留めたままの方が好印象を与えることもあるため、シーンに応じて判断しましょう。
たとえば、面接官との距離が近い場面や短時間の面談などでは、ボタンを留めたままのほうがきちんとした印象を与えられます。長時間の面接やセミナーなどではボタンを外してリラックスすることで、より自然な姿勢を保てるでしょう。
ジャケットのポケットには「フラップ」と呼ばれる部分がデザインされています。フラップは、もともと屋外での雨や埃からポケットの中身を守るためのものとして考案されました。そのため、基本的なマナーとしては屋外ではフラップを外に出し、屋内では中に入れるのが一般的とされています。このようにすることで、スーツのシルエットが美しく保たれ、フラップの機能性も活かされます。
しかし、現代のビジネスシーンではフラップを常に外に出したままでいることも少なくありません。大切な商談や会議などの正式な場ではフラップを外に出しておくことで、きちんとした印象を与えられます。
一方、カジュアルな場やリラックスした雰囲気の中ではフラップを中に入れることで、より自然なスタイルを楽しめます。シーンや状況に応じてフラップの扱い方を変えることで、スーツの着こなしの幅が広がるでしょう。
スーツを着用する際、ポケットに物を入れないようにしましょう。スーツのポケットに物を入れるとポケットの形が崩れやすくなり、スーツの美しいシルエットを損なってしまう可能性があります。
また、胸前の外ポケット(ウェルトポケット)は主にポケットチーフを入れるためのものとされているため、ボールペンやキーなどの小物を入れることは避けましょう。特にボールペンはインクが漏れるリスクもあるため、スーツを汚してしまうことも考えられます。
仕事中に使いやすいポケットとして設計されているのが左胸の内ポケットです。ただし、重い物や大きな物を入れるとジャケットの形が崩れる原因となります。そのため、必要最低限の物だけを入れるようにするとスマートです。
ビジネスシーンやフォーマルな場ではジャケットの着用が基本です。ジャケットはスーツの全体的なシルエットや印象を形成する要素であり、正式な場では着用が欠かせません。
しかし、近年のクールビズの取り組みにより、夏の暑い時期には「ノーネクタイ、ノージャケット」が許容されるようになってきました。クールビズは環境問題への対応や快適なオフィス環境の実現を目的として推進されている取り組みで、ジャケットやネクタイを省くことで室内の冷房の使用を抑えることが期待されています。そのため、クールビズの期間中はジャケットを脱ぐことが許容されています。
ただし、外部のお客様との打ち合わせや大切な会議などの場では、ジャケットを着用することがマナーとして求められることもあります。そのため、TPOを考慮して、ジャケットの着用/非着用を適切に判断することが大切です。
スーツにシワがあると、どんなに高価なスーツでもその価値は半減してしまうといっても過言ではありません。シワは着用者のケアの不足や乱れた生活を示唆する可能性があり、ビジネスシーンでは好ましくない印象を与えかねません。スーツを着る場合は、シワを取り除いてから着用するようにしましょう。
シワを取る方法としてアイロンを使用するのが一般的ですが、スーツの素材や色によってはアイロンがけが難しい場合もあります。その際は、霧吹きを使い、水を吹きかけてシワを手で伸ばします。水は軽く濡らすくらいが目安で、吹きかけたあとはハンガーにかけて乾かします。また、スチーム機能を持つアイロンを使用すれば、ジャケットをハンガーに吊るしたままシワが取れます。
スーツを選ぶ際、もっとも重要なのはサイズ感です。体型に合ったサイズのスーツを着用することで、自分の魅力を最大限に引き出せるでしょう。サイズが合っていないスーツを着ると、不格好に見えるだけでなく、動きにくさや不快さを感じることもあります。
たとえば、それぞれのパーツがタイトに作られているスリムなタイプのスーツは、細身の方に最適です。ただし同じ身長170cmの方でも、細身の方とガッチリ体型の方では、ウエストやジャケットの幅(肩幅・胸囲・胴囲)が大きく異なることがあります。
スーツのサイズ選びは、シューズを選ぶのと同じです。ぴったり合ったシューズは、歩きやすく、足をキレイに見せてくれます。しかし、サイズが合わないシューズを履くと、足が痛くなり、シューズが早く傷んでしまうことがあります。スーツも同じで、体型に合ったサイズを選ぶことで、長く快適に着用できます。
スーツはビジネスやフォーマルな場面での主役ですが、その下に着るワイシャツも全体の印象を大きく左右します。ワイシャツの色やデザイン、そしてマナーが適切でなければ、せっかくのスーツが台無しになってしまうこともあるでしょう。ここでは、スーツをより一層引き立てるためのワイシャツに関する基本的なマナーを詳しく解説します。
ビジネスシーンやフォーマルな場でスーツを着用するときには、ワイシャツの選び方にもポイントがあります。特にワイシャツの袖の長さは、相手に与える印象を大きく左右する要素のひとつです。
一般的に、ビジネスシーンでのスーツ着用時には長袖のワイシャツを選ぶのが基本とされています。これは、長袖のワイシャツがフォーマルな場に相応しいとされるためです。長袖のワイシャツは、ジャケットの袖から1〜1.5cmほど見えるサイズを選ぶと良いでしょう。
一方、半袖のワイシャツはカジュアルな印象を与えるため、ビジネスシーンやフォーマルな場では避けるべきとされています。夏の暑い時期でも、重要なビジネスシーンでは半袖のワイシャツをスーツの下に着るのはできるだけ避けたほうが良いでしょう。
しかし、例外として社内のクールビズ基準など、企業や組織のドレスコードによっては半袖のワイシャツの着用が許可されている場合もあります。その際は、その組織のルールやマナーをしっかりと確認し、適切な服装を心掛けましょう。
スーツを着用する際、ジャケットの袖口からワイシャツの袖をわずかに見せるのはビジネスやフォーマルな場面での一般的なマナーとされています。しかし、どれくらいの長さでワイシャツの袖を見せるべきなのか、初心者の方はわかりにくいかもしれません。
ジャケットの袖口からワイシャツを1㎝程度見せるのはバランスの良いスタイリングを目指す上での基本です。これにはいくつかの理由があります。
まず、ワイシャツの袖を少し見せることで全体のコーディネートにアクセントを加え、より洗練された印象を与えられます。また、ワイシャツの袖が見えることで、ジャケットとワイシャツの間に適度な隙間ができ、手に袖がまとわりにくくなって動きやすさが向上します。
しかし、ワイシャツの袖を長く出しすぎると全体のバランスが崩れてだらしなく見えてしまう可能性があります。逆に、ワイシャツの袖がまったく見えないと窮屈そうに見えることがあるため、適切な長さのものを着用するのがポイントです。
たとえば、手を挙げたときや腕を動かしたときにジャケットの袖が上がり、ワイシャツが過度に見える場合は、ジャケットの袖丈が長すぎます。このような場合は、適切なサイズのジャケットを選ぶか、袖丈を調整してもらうことをおすすめします。
ビジネスシーンでスーツを着用する際、ワイシャツの衿先はジャケットの衿下に隠れるようにしましょう。これにより、全体のスタイルが整い、きちんとした印象を与えられます。たとえば、大切な商談やプレゼンテーションの場面で衿先がジャケットの衿からはみ出していると、相手にだらしない印象を持たれてしまう可能性があります。全体のシルエットだけでなく、衿先など小さなことにも気を配ることで相手に良い印象を与えられるでしょう。
フォーマルな場面でのワイシャツの色は、白や淡色カラーのワイシャツが推奨されています。白や淡色のワイシャツは清潔感があり、相手に信頼感を与えます。また、濃い色のスーツとのコントラストが美しく、全体のバランスが取りやすいというメリットもあります。
一方、ビビッドな色や派手な柄のワイシャツは、カジュアルな場面やパーティーなど、ある程度の自由度が許される場面での着用が適しています。
スーツを着用する際、その装いを一段と引き立てるのがネクタイやベルトなどの小物です。実は小物の選び方や使い方にもマナーが存在します。ビジネスシーンでは適切な小物の選び方が求められます。ここでは、スーツを着用する際の小物に関するマナーを解説します。
ネクタイはビジネスシーンにおいてもっとも基本的な小物のひとつです。ビジネスシーンでは派手な色や柄よりも落ち着いた色合いのものを選ぶようにします。ネクタイの長さもポイントで、結んだ際に先端がベルトの上辺りにくるものを選ぶのが一般的です。
ベルトはシンプルなデザインのものを選びましょう。また、シューズとベルトの色を合わせると統一感が演出できるため、おすすめです。
ビジネスシーンでは黒やダークブラウンの革靴を着用するのが基本です。シューズは常に清潔に保ち、定期的に磨いておきましょう。
靴下の色はスーツやパンツの色に合わせます。短い靴下やアンクルソックスは避け、カーフレングスのものを選ぶと良いでしょう。
冬場など、寒い時期にはコートを着用します。コートはシンプルなデザインのものを選びましょう。カジュアルすぎるダウンジャケットやプライベートで着用するようなアウターは避けたほうが良いでしょう。
カフスやポケットチーフなどのアクセサリーは必須ではありませんが、華やかさを演出したい場合や特定のシーンで着用すると効果的なアイテムもあります。ビジネスにおいてはシルバーアクセサリーなど華美なものは避け、シンプルなネクタイピンなどを用いると良いでしょう。
本記事ではスーツに関するマナーについて、シーン別に解説しました。スーツにはビジネスや冠婚葬祭など、着用シーンによって異なるマナーが存在します。基本的にはシワがなく清潔に手入れされていてシンプルなコーディネートをしていれば、大きな問題になることはありません。スーツを着用する際にはぜひこの記事を参考にしてスマートに着こなしてみてください。