礼服とは?着用シーンや喪服と黒いビジネススーツの違いを解説

24.03.13

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礼服とは?着用シーンや喪服と黒いビジネススーツの違いを解説

冠婚葬祭や会社で正装が必要なイベントでは「礼服」の着用が求められます。しかし、「礼服」とは何か、着用するべきシーンや喪服との違いなどを理解されていない方も多いのではないでしょうか。

服装はその場のマナーを示すものです。そのため、間違った服装を選ぶとマナー違反となってしまい周囲との違和感を生む要因になりかねません。

こちらの記事ではそのような疑問を解決するため、礼服について幅広い角度から詳しく解説します。

1.礼服とは?

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「礼服」とは特別な場や公式のイベントでの礼儀正しい装いを指します。なお、礼服の起源は古く戦後にまで遡ります。終戦直後の日本は衣食住さえ厳しい状況で、格式や立場に適した礼服を選ぶ余裕はありませんでした。この時代、多くの国民は生活の環境改善に努力を優先し、社会的なフォーマリティーやエチケットは二の次でした。しかし、日本が経済的に復興し始めるにつれて社会の構造も変化し始めます。

企業が次々と設立され、ビジネスの世界では礼節を重んじる文化が生まれるようになりました。その結果、略礼服といった新たなフォーマルウェアが普及し始め、現在の礼服の形が生まれました。

現在の礼服は冠婚葬祭や公式のイベントなど、一定のフォーマルなシーンで着用されています。礼服の着用は、その場の格式や重要性を示すものであり他者への敬意を表すためでもあります。したがって、場の状況に応じた適切な礼服選びが重要です。これは、マナーを遵守するための一環でもあります。

2.礼服を着用するシーン

礼服を着用するシーンは主に「冠婚葬祭」があげられます。日本の伝統的なライフイベントであり、それぞれ特定の服装が求められます。

冠婚葬祭の「冠」は人生の節目となる祝い事の総称です。成人式・節句・七五三・入学式・就職などが含まれます。これらのイベントでは新たなステージに進む方はもちろん、参列者もまた礼装が一般的です。こうした服装は人生の新たな節目を祝う重要な場所で存在感を示す意味合いがあります。

「婚」は結婚に関するあらゆるイベントを指します。結婚式・披露宴・結納などで、新郎新婦以外に参列者も礼装が必須です。新生活をスタートさせる2人への尊重と祝福の意を示すためとされています。

「葬」は葬儀全般を指します。お通夜・告別式・法事などの場では故人への最後の敬意として、喪服となる礼服が求められます。

「祭」は一般的な式典や祭典などの行事全般です。お盆・正月・七夕・お彼岸などのイベントでも、その場の格式や重要性に応じて礼服の着用が推奨されます。

以上のように、さまざまな場面で礼服が必要になります。そのため、自分のライフスタイルに合わせて適切な礼服を用意しておくと安心でしょう。

3.礼服の種類

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礼服は基本的に3つの種類があります。

  読み方 格式 歴史的背景
正礼装 せいれいそう 一番格式の高い礼服 ・19〜20世紀初頭、欧米で確立された服装
準礼装 じゅんれいそう 正礼装の次に格式の高い礼服 ・20世紀になってから確立された服装 ・セミフォーマルとも呼ばれる
略礼装 りゃくれいそう ゲストスタイルとして幅広いシーンで着用可能 ・日本独自のフォーマルウェアのため、海外から普及された歴史はない


次に、礼服の種類や目的などについて詳しく解説します。

3-1.正礼装

正礼装はもっとも格式高い礼服で、その名のとおり正式な場にふさわしい衣装です。社会的な地位や尊厳を示すために、特別な場や公式のイベントで使用されるケースが多い装いです。
正礼装はモーニングコート・燕尾服・タキシードに分類され、時間帯やシーンで使い分ける必要があります。

  • モーニングコート
    モーニングコートは正式な昼間のイベントに適した礼服です。理由は長いコートとストライプパンツを特徴とする独特のデザインを持ち、高い格式感を示すためです。具体的な着用シーンとしては、結婚式・葬儀の喪主・式典の主賓などのほか、格式高いシーンで多く見受けられます。なお、モーニングコートは18時以前のイベントの際に着用するのが一般的です。
  • 燕尾服(テールコート)
    燕尾服はもっとも格式高い夜間のイベントに適した礼服です。燕尾服が特別な形状のコート(背面が2つに分かれ、燕の尾に見えることからその名がついた)が特徴で、高い格式感を示します。
    具体的な着用シーンとしては晩餐会やオペラなどのほか、もっとも格式の高い夜間のイベントで使用されます。なお、ドレスコードに「ホワイトタイ」と記載がある場合は燕尾服を着ていく必要があるためご注意ください。
  • タキシード
    タキシードは比較的カジュアルな夜間のイベントに適した礼服です。タキシードが黒や深紺のジャケット・パンツ、白のワイシャツにより、比較的カジュアルな印象になるためです。タキシードはパーティーやダンス、カジュアルな晩餐会などで使用され、華やかさとフォーマルさを兼ね備えています。ただし、タキシードを弔事で着用するのはNGとなっているため、ご注意ください。

3-2.準礼装

準礼装は主にディレクターズスーツとブラックスーツの2つのタイプがあり、それぞれ異なる特徴があります。

  • ディレクターズスーツ
    ディレクターズスーツはその名前が示すとおり「ディレクター」、つまり重役が着用する品格のある装いです。黒のジャケットやグレーのベスト、ストライプのコールパンツの組み合わせが基本スタイルです。ディレクターズスーツは結婚式の主賓や挨拶などの役割を担う方々が主に着用します。これらの場面では大役の重要性や尊敬の意を示すために、一般的なスーツよりも一段階上の存在感が求められるためです。このように、ディレクターズスーツは洗練されたデザインと品格の高さから、準礼装として広く認識されています。
  • ブラックスーツ
    通常のスーツとブラックスーツの大きな違いは色と素材です。ブラックスーツは通常のスーツ(黒色)と比較すると、深みのある「漆黒」色が採用されています。さらに、ツヤがない素材が用いられている点も大きな特徴です。ブラックスーツが持つ特性により厳粛な雰囲気を演出できるため、フォーマルなシーンでも違和感がありません。結婚式や葬儀の場などでブラックスーツが選ばれるのはこのような理由があるといえ、その特性から多くのシーンに適応できる装いといえます。

3-3.略礼装

略礼装はドレスコードが必要な場面で重宝されるゲストスタイルです。略礼装は色々なシーンに着用でき、多くの方に着用されています。一方で、略礼装の汎用性により着こなしを間違えるとビジネススーツと間違われる恐れもあるため、着用する際は十分注意が必要です。

  • ダークスーツ
    ダークスーツはブラックやダークネイビーのような深みのある色調のスーツを指します。ダークスーツはフォーマルな場で用いられることが多く、「ダーク」すなわち暗い色合いが大きな特徴です。しかし、カジュアルな印象を持つ茶色や緑はダークスーツには含まれません。理由は、ダークスーツが持つべき格式高いイメージや礼儀正しさから乖離しているためです。また、ダークスーツの柄は、基本的に無地が一般的です。無地柄のシンプルさがフォーマルな雰囲気をより一層引き立てます。こうした理由からダークスーツはその色彩と柄の選択により、フォーマルな場での適切なスタイルとして重宝されています。

4.礼服と喪服の違いは?

礼服と喪服はフォーマルなシーンで着用される服装ですが、その使用状況と特性は大きく異なります。まず、礼服については冠婚葬祭などのフォーマルなシーンで着用される装いです。結婚式・葬儀といった特別な場での出席が求められるときには、礼服を身につけることが一般的です。礼服はその名のとおり、特定の場における礼儀を表現するための服装であり、それ自体が一定の格式や品格を持つものとされています。
一方、喪服は葬儀や法事といった弔事の場でのみ着用される装いを指します。喪服は故人を偲び、故人への敬意を表すものであり、色やデザインは一定の規定に従って選ばれます。喪服にも礼服と同じく「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3種類が存在します。
まず「正喪服」はもっとも格式が高く、洋装と和装の形態が存在する喪服です。重要な弔事に対応するための服装で、故人へ最大限の敬意を示す意味合いがあります。次に「準喪服」はあらゆる弔事に適応可能な喪服です。主に遺族や葬儀、告別式の参列者が着用します。準喪服は故人を偲びつつも適切な敬意を保つための服装です。最後に「略喪服」は急なお通夜や三回忌の法事など予期せぬ弔事に対応するための喪服です。略喪服は短期間で準備を整える必要がある場合に適した服装といえます。

それぞれの違いを理解することで、適切なシーンや立場に応じた礼服と喪服の服装選びができるようになります。

5.礼服と黒のビジネススーツの違いは?

礼服と黒のビジネススーツは、はじめての方には同じように見えるかもしれません。しかし、礼服と黒のビジネススーツには素材やデザインの面など大きな違いがあります。これらの違いを理解することで、適切な場所で適切なスーツを選択できるようになります。

5-1.違い1:色

礼服の色は深い漆黒が一般的です。これは礼服が厳粛な雰囲気に適応するためです。ビジネススーツの黒色は明るい印象を持つため、礼服で求められる深い色合いとは一段階異なります。
たとえば、葬儀などの場で礼服とビジネススーツを着ている方がいれば、見た目の色で一目瞭然です。なお、ビジネススーツはこのような故人を偲ぶ場には適さないため、ビジネスマナーに疎い方と周囲から認識されるかもしれません。

5-2.違い2:素材・光沢感

礼服とビジネススーツの素材や光沢感も大きな違いです。礼服は光沢のない素材が一般的に使われます。礼服があくまで敬意を表すものであり、光沢感があると華やかさが出てしまうためです。
お悔やみを申すべきシーンで光沢感を持つ素材は、マナー違反となるため避けるべきです。このように、素材や光沢感は礼服とビジネススーツの違いを明確に差別化しています。

5-3.違い3:デザイン

礼服とビジネススーツはデザインによっても明確に区別されています。まず、ラペルのステッチの違いです。ステッチの有無はその服装が高度なフォーマルウェアを示す重要な指標です。
たとえるならば、タキシードやモーニングコートなどの礼服にステッチは存在しません。ステッチの有無という微細な違いが礼服とビジネススーツの間で印象の違いを生む要因のひとつといえます。
さらに、裾の「ベント」にも違いがあります。ビジネススーツには裾に切れ込みがあるのが一般的であり、ビジネススーツが動きやすさを重視しているためです。一方、礼服では基本的にノーベント、つまり裾に切れ込みがありません。礼服が特別な場で着用されるものであり、格式や品格を優先した結果といえるでしょう。

礼服とビジネススーツは「シルエット」も大きく異なります。買い替える機会が少ない礼服は体型の変化にも対応できるように、ゆったりとしたシルエットが多いのが特徴です。一方、ビジネススーツは流行によって細身のスタイルも存在します。その時々のファッショントレンドに合わせたデザインが求められるためです。

このように、ラペルのステッチや裾のベント、シルエットの違いにより、礼服とビジネススーツは明確に区別されています。

6.礼服選びで押さえるべきポイント3つ

礼服を購入したことのない方は、どのような点に注意すれば良いのか不安を感じるものです。礼服は長い期間使用するため、適当に選んでしまうと後悔してしまうでしょう。ここでは礼服選びで押さえておくべきポイントを3つに絞って解説します。

6-1.シーズンを踏まえたタイプを選ぶ

季節によって気温や湿度が大きく変わる日本では、このような外的要因も考慮する必要があります。基本的にはオールシーズン用の礼服がおすすめですが、夏場は暑さを考慮し、吸湿性や通気性に優れた礼服が望ましいです。
夏用の礼服は暑い時期に着用するため、熱を逃がしやすく汗を吸収する素材が使われています。

6-2.長期間着用できるデザインを選ぶ

礼服は高価であり、頻繁に買い替えるものではありません。そのため、5~10年を見越して選ぶことも重要です。長く着用できるポイントはシンプルで洗練されたデザインを選ぶことです。長く使えるデザインとは流行に左右されにくく、時代を問わずに適応できるようなデザインを指します。

6-3.アジャスター付きであれば体型変化にも対応できる

年齢とともに体型は変化します。ウエスト回りは年齢の変化が目立つ部分で、体重の増減により顕著に影響が出ます。

アジャスター付きの礼服を選ぶと、体型の変化にも柔軟に対応できます。アジャスターはウエスト部分のサイズを微調整できる便利な機能です。アジャスターがあれば体型が多少変わったとしても、すぐに新しい服を購入する必要はありません。アジャスターを調整することで、常に身体にフィットした状態で服を着用できる点は大きなメリットといえます。

まとめ

本記事では礼服を中心にさまざまなフォーマルウェアについて解説しました。礼服やブラックスーツ、ダークスーツの特性や着用シーンを深く掘り下げ、ビジネススーツとの違いも紹介しました。
また、喪服と礼服はともにフォーマルなシーンで着用される服装ですが、使用状況と特性は大きく異なります。それぞれの違いを理解することで、各場面で適切な選択が可能となるでしょう。
さらに、礼服の選び方はポイントを3つに絞って紹介しました。礼服を選ぶ際の参考になる情報となっていますので、今回の記事を通じてフォーマルウェア選びの理解を深めてビジネスマナーに適した服装を選択してください。

この記事を書いた人
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2004年に株式会社コナカに入社。2007年にコナカの店長として6年間勤務。その後茨城地区の複数店舗を統括するエリアマネージャーとして4年間勤務。2016年新規事業である「DIFFERENCE」のバイヤーとして商品本部に配属され、7年目を迎える。現在はレディースとメンズカジュアル関係のバイヤー業務を担当。実際のウェァリング調査を密に行い、市場の流れやお客様のニーズを察知することで次シーズンへの企画や生産に活かしています。また異業種や幅広い年齢層の方々とも積極的に交流する事を大事にしております。バイヤーの仕事は物を作ることも大切ですが、まずは販売スタッフに想いを届ける事が重要と考えています。