ビジネスシーンや特別なイベントにおける服装として近年、「カフスボタン」が注目を集めています。理由はワイシャツの袖口を留めるだけでなく、オシャレを演出できるアイテムだからです。しかし、「オシャレ」なアイテムも正しく理解していなければ、マナー違反だと周囲から印象づけられてしまうかもしれません。
そこで本記事では、カフスボタンの基本的な情報からマナーなどを幅広く解説します。カフスボタンへの理解がない方でも、記事を読めば適切に身につけられるでしょう。
ワイシャツの袖口を留めるための装飾的なボタンを指します。フォーマルな服装に欠かせない要素であり、ドレスやタキシードなどの正装において重要な役割を果たします。また、ワイシャツの袖口をきちんと閉じる役目だけではありません。
素材やデザインによって異なる表情があり、気分やコーディネートに合わせて選べる楽しさもあります。多くのシーンでさりげない「オシャレ」が演出できることから、男性のファッションアイテムとして注目を集めています。
カフスボタンの起源は17世紀のフランスまで遡ります。当時、社交界はネクタイやリボンと同様にワイシャツの袖にも装飾としてレースやリボンが採用されていました。その後、時代の流れとともに金や銀のボタンを金属製のチェーンでつないだことが始まりといわれています。現在ではフォーマルな装飾品としての位置づけを確立しており、独自の魅力と存在感で多くの方を魅了しています。
ここではカフスボタンを付けるメリットを3つに絞って説明します。ひとつ目は、「目立ち過ぎずさりげない存在感」です。カフスボタンは服装の全体的な印象を壊すことなく、控えめながらも上品なアクセントを加えられるアイテムです。
たとえば、取引先との名刺交換やプレゼンテーション時にチラリと見えると、相手方には知的でオシャレな印象に見えます。このような点から、目立ち過ぎず存在感を演出するひとつの手段となっています。
2つ目は「個性を表現できる」点です。形状・配色・材質は無数に存在し、自分の好みにカスタマイズできます。一例として、犬の足跡をモチーフにしたデザインを選ぶことでユーモラスな個性を表現できます。
また、クラシックなデザインは落ち着いた雰囲気を印象づけられるでしょう。このような点から、個性を表現する有効なツールになるのは大きなメリットといえます。
最後は「オシャレの選択肢が広がる」ことです。訪れる状況によってさまざまな使い方ができるため、優秀なビジネスパーソンを演出したい場合はシルバーのシンプルなデザインがおすすめです。またカジュアルなパーティーでは、カラフルで個性的なデザインを選ぶことで周囲から注目を集められるでしょう。このように、さまざまな場面によって「オシャレ感」を演出できるアイテムとして重宝されています。
カフスボタンといっても、どのような種類があるのでしょうか。ここでは主要の3種類を説明します。
こちらの最大の特徴はデザインの一部が回転する機能で、着脱の操作がしやすくなります。そして、ビジネスに限らずパーティーなどのシーンで違和感なく使用できる点も人気の要因です。
チェーン式は1920年代までの主流であったクラシックなタイプで、ボタンと留め具をつないでいるチェーンが特徴です。とくに、このチェーンが派手な印象にしているためビジネスシーンや礼服には適していません。
しかしながら、その独特なデザインは注目を集めるため、使い方次第で魅力的なアクセサリーとなり得ます。たとえば、シンプルな服装にチェーン式のカフスボタンを加えるだけで、一気に個性的な印象に様変わりします。
固定式はその名のとおり、ボタン部分と留め具部分が一体となっています。こちらは上級者向けのアイテムとして認識されています。カフスのサイズによって袖口に適さない可能性があり、ワイシャツとの適合性を事前確認する必要があるためです。こうした理由から、初心者には少々取り扱いが難しいかもしれません。
ラップアラウンド式はカフスの前と後ろを結ぶようにつけるタイプです。魅力は何といっても柔軟性で、さまざまなスタイルのワイシャツや色にも相性が良いため、多くの方が愛用しています。
また、このタイプはシンプルなデザインから贈答品としても喜ばれるため、ビジネスパートナーや友人へのプレゼントとしてもおすすめです。
スナップ式は2つに分離しているボタンを「スナップボタン」でつなげている点が大きな特徴です。1920年から1940年にかけて流行しましたが、現在でも色あせることなく魅力を保ち続けています。
ただ、流通量が少ないため、市場に出回っている物の多くはアンティーク品です。ユニークな特性やアンティークな魅力もあり、今でも多くの方々に愛用され続けています。
紐式は一風変わった素材とデザインからカジュアルな装いに最適なアイテムです。金属を使用していないため袖が当たっても異音がしないといったメリットもあり、オフィス環境で作業を行う際に重要なポイントです。
しかし、ほかのカフスボタンと比較すると壊れやすいデメリットもあります。紐式を使用するときは、取り扱いに十分な注意が必要です。
カフスボタンはすべてのワイシャツに対応しているわけではありません。能動的にカフスボタンを活用するためには、ワイシャツの形状を理解することが大切です。ここではカフスボタンが付けられるワイシャツを紹介します。
袖口の片方にボタンがあり、両方にボタンホールがあるワイシャツをいいます。この形状の大きな特徴として、通常のボタンだけでなくカフスボタンでも袖口を留められる点です。この特性により、フォーマルなシーンではエレガントなカフスボタンを、カジュアルな状況ではシンプルなボタンを使用するなど状況に応じた使いわけが可能です。コンバーチブルカフスは汎用性の高さから、もっとも人気のあるワイシャツといえます。
ダブルカフスは袖口を二重に折り返した作りが特徴的なワイシャツです。重厚感とエレガンスを提供し、結婚式やパーティーなどの祝い事を一層華やかに彩ります。たとえば、クラシックな黒のタキシードに白のダブルカフスのワイシャツを合わせれば、一段と格式高い装いが完成します。ただし、ダブルカフスはシングルカフスとは異なり、ボタンがありません。カフスボタンを忘れると袖口が開いてしまうため、着用前の確認を忘れないようにしましょう。
テニスカフスは袖口にボタンがなく、ボタンホールが2つあるワイシャツです。機能性と利便性に優れた「コンバーチブルカフス」の普及や特異なデザインであることも影響し、最近ではあまり見かけなくなりました。そのため、カフスボタンのみ使う方にはおすすめのワイシャツです。
ワイシャツの中にはカフスボタンが付けられないタイプも存在します。ここでは、カフスボタンが使用できないワイシャツのタイプを説明します。
シングルカフスはカフスボタンが必要ないワイシャツです。特徴としては袖口が折り返されずにボタンが直接ついている点です。効率的でシンプルなデザインのシングルカフスは日常的なビジネスシーンやカジュアルなシーンには最適ですがフォーマルな場では適しません。
ターンナップカフスもカフスボタンが必要ないタイプのワイシャツとして知られています。袖口が一部折り返されてボタンが直接ついているのが特徴で、袖口の留め具としてカフスボタンを装着する必要がありません。ターンナップカフスは日常的なシーンで手軽に着用できる一方、カフスボタンを活用したい場合には不適当なワイシャツといえます。
カフスボタンは存在感と独自性でさまざまなシーンで活躍します。ここでは、カフスボタンを付けるシーンとおすすめの種類を紹介します。
過度に派手なカフスボタンは場に相応しくないため、相手からの印象を悪くしてしまう可能性があります。そのため、ビジネスシーンではシンプルなデザインが最適です。シルバーのような落ち着いた色調や、洗練されたデザインであれば存在感も演出できるのでおすすめです。このように、ビジネスシーンでのカフスボタン選びは空間の雰囲気や自身のイメージを維持するために重要です。
結婚式やパーティーといったフォーマルな場では、上品で洗練されたカフスボタンが求められます。フォーマルな場での装いは全体の雰囲気や一体感を作り出す重要な要素となるためです。明るいシーンでの装飾は金銀で、色は白が基本とされています。
また、パールや貝などの自然素材を使用したものが好ましいでしょう。一方、刃物やガイコツなどのイメージが悪いデザインや過度に奇抜なものは避けるべきです。お祝いの場に相応しいアイテム選びが重要です。
弔事は故人を偲ぶ重々しい場であり、雰囲気や意義を尊重する必要があります。過度なアクセサリーは厳かな雰囲気を乱す可能性があるため避けるべきです。カフスボタンは独自性と存在感によってさまざまなシーンで活躍しますが、それぞれの環境において適切な装いを心がけることが大切です。
カフスボタンは正しく装着しなければ、せっかくのデザインが台無しになってしまうかもしれません。ここではカフスボタンの正しい付け方をわかりやすく解説します。
ワイシャツの袖口のボタンホールをしっかりと合わせます。次に、上からカフスボタンを通し、最後に裏側の留め金をしっかりと固定します。注意点としてはカフスボタンの向きです。カフスボタンを差し込む際は、表面が手の甲側になるようにしてください。反対にしてしまうと留め具が前面に出てしまいますので、注意しましょう。
カフスボタンの保管方法によって寿命が大きく変化します。適切な方法で管理すると、長い期間美しい状態をキープできます。推奨する保管方法ですが、キズや変形防止のため「専用ケース」で保管しましょう。
カフスボタンを多く保有している場合は複数収納できるカフスボックスに入れて保管しても問題ありません。また、カフスボタンの使用後は乾いた布やタオルで丁寧に拭き取りましょう。特に金属製は湿度に敏感で、湿度が高いと変色しやすいです。そのため、湿度が高くない日陰での保管をおすすめします。
本記事ではカフスボタン未経験者向けに、基本的な概要から種類、正しい装着方法などを紹介しました。カフスボタンはビジネスからフォーマルシーンまで多様な場で活用できるアクセサリーです。種類は多岐にわたり、それぞれの特性を理解しながら適切な場での活用が大切です。
しかし、ワイシャツの袖口の形状によってはカフスボタンが使用できない場合もありますので、ワイシャツ選びも重要です。今回の記事をぜひ活用していただき、カフスボタンを使用したワンランク上の「オシャレ上級者」を目指しましょう。